※勤務先の被保険者数が常時51人以上の場合に適用されます。50人以下の企業では106万円の壁は適用されず、一律で「130万円の壁」が基準となります。
106万円の壁とは?社会保険加入が義務づけられる「5つの条件」
2024年10月の法改正により、社会保険の短時間労働者への適用拡大対象が「従業員51人以上の企業」まで広がりました。以下の5つの要件をすべて満たした場合、パート・アルバイトであっても勤務先の健康保険・厚生年金保険への加入が法律上必須となります。
| 要件項目 | 基準と判定ルール |
|---|---|
| 1. 企業規模 | 勤務先の厚生年金被保険者数が常時51人以上の企業(※チェーン店の場合は全店舗合算) |
| 2. 週労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上(契約上の時間。一時的な残業は除く) |
| 3. 月額賃金 | 所定内賃金が月額88,000円以上(基本給+恒常的手当。年換算約105.6万円) |
| 4. 雇用見込み | 2ヶ月を超えて雇用される見込みがあること(更新条項がある場合を含む) |
| 5. 学生除外 | 昼間学生ではないこと(大学・専門学校の昼間生は原則として適用除外) |
手取り逆転現象とは?年収105万円 vs 110万円の手取り比較
106万円の壁で最も注意すべきなのが「働いて額面給与を増やしたのに、手取りが減ってしまう」現象です。年収105万円で扶養内に収まっていたパート主婦が、少しシフトを増やして年収110万円になった場合の試算を見てみましょう。
額面年収は5万円増えたにもかかわらず、本人が支払う社会保険料(健康保険+厚生年金)が年間約16.5万円発生するため、手取りは逆に約12万円も減ってしまいます。これが「手取り逆転」です。
「手取りが減るだけじゃない」社会保険に加入する3つの大きなメリット
手取り額の減少だけに注目が集まりがちですが、社会保険に加入することには給与控除以上の生涯メリットがあります。
将来もらえる年金が増える
国民年金(基礎年金)に加えて「厚生年金」が上乗せ受給できます。月額8.8万円で20年間加入すると、将来の年金が年間約11万円一生涯増額されます。
病気や怪我の「傷病手当金」
業務外の病気や怪我で働けなくなった場合、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月間にわたり支給されます(配偶者の扶養健康保険では受給できません)。
シフト制限なく働ける
「106万や130万を超えないように月末にシフトを削る」というストレスから解放され、繁忙期や時給アップの恩恵をフルに享受できるようになります。
月収別の社会保険料控除額と手取り早見表(短時間労働者向け)
106万円の壁を超えて新たに社会保険(健康保険+厚生年金+雇用保険)に加入した場合の、月収別の控除額と手取り目安です(協会けんぽ・東京都基準、介護保険料非該当の40歳未満)。
| 額面月収 | 標準報酬月額 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 | 社保控除合計 | 手取り月収目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月給 88,000 円 | 88,000 円 | 約 4,400 円 | 約 8,052 円 | 約 13,000 円 | 約 75,000 円 |
| 月給 100,000 円 | 98,000 円 | 約 4,900 円 | 約 8,967 円 | 約 14,500 円 | 約 85,500 円 |
| 月給 110,000 円 | 110,000 円 | 約 5,500 円 | 約 10,065 円 | 約 16,200 円 | 約 93,800 円 |
| 月給 125,000 円 | 126,000 円 | 約 6,300 円 | 約 11,529 円 | 約 18,600 円 | 約 104,500 円 |
| 月給 150,000 円 | 150,000 円 | 約 7,500 円 | 約 13,725 円 | 約 22,100 円 | 約 125,000 円 |
※雇用保険料(0.6%)を含みます。所得税・住民税は年収や扶養状況により別途数千円天引きされる場合があります。
厚生年金に入ると将来の年金はいくら増える?試算シミュレーション
厚生年金の受給額は「平均標準報酬月額 × 5.481 / 1000 × 加入月数」で算出されます。月収8.8万円〜12万円で短時間加入した場合でも、長期間加入することで将来受け取る年金額が一生涯増額されます。
※平均月収8.8万円(標準報酬月額8.8万円)で試算。65歳から受給開始し、85歳までの20年間で受け取ると総額約230万円以上の年金給付増となります。
手取り逆転現象を解消する3つの具体的シフト戦略
所定労働時間を週19時間以内、または月収を8.8万円未満に抑えることで、106万円の壁をクリアして配偶者の扶養に留まります。
社会保険料(月約1.5万円)を引かれても手取り100万円以上を維持するためには、週24〜25時間程度までシフトを増やし、月収11万〜12万円以上稼ぐことで「働いた分だけ手取りが増える」健全な状態に移行できます。
厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」により、会社が短時間労働者向けに特別手当を支給すれば国から最大50万円の助成金(キャリアアップ助成金)が出ます。職場の担当者に制度の利用を打診してみるのも賢い手段です。